胃潰瘍についてその原因について、看護の視点から分かり易く解説していきます。
なんで胃潰瘍になってしまったんだろうと考えた時に、何が原因で胃潰瘍になってしまったのかを知りたい方も多いと思います。
この記事では、胃潰瘍になってしまった原因を分かり易く以下の内容で解決していきます。
①胃潰瘍の原因が分かる。
②治療の内容が分かる ③胃潰瘍は完治するのかどうかが分かる。 |
僕は、いま一般病棟ではたらく看護師歴16年ぐらいのナースマンです。
病棟には、入院してくる患者さんの中に胃潰瘍の方が入院してきますので、入院中に得た看護の経験をふまえて書いていきますので、よかった参考にして頂くと嬉しいです。
目次
胃潰瘍になる原因は大きく2つの原因からなるということが分かっています。
一つはピロリ菌で、もう一つはNSAIDsの内服薬です。
では、どうしてその2つが胃潰瘍の原因になるかというと、胃壁の健康状態のバランスをくずしてしまい崩壊させてしまうからです。
つまり、胃の健康状態はバランスによって保たれています。
たとえば
・「暴飲暴食をした」
・「お酒を飲み過ぎて二日酔いになった」 ・「ストレスで胃が痛くなって食欲がない」 |
など、胃の不快感や胃炎症状と思われる症状は、胃に負担のかかる要因から起こりますよね。
みなさんの中にも幾度となく経験してきたことだと思います。
胃の健康状態の悪化は、胃壁の血流の減少や低下するような生活習慣から起こることがいえます。
それをさらに胃潰瘍へと引き起こしていく直接の原因がピロリ菌とNSAIDsの内服の作用になりますね。
なぜピロリ菌とNSAIDsの内服薬がバランスを壊していくのかについて、その詳しい説明を次の項で解説していきますね。
ちょっとその前に、歴史的な背景をご紹介します。
これまで強い酸性の状態にある胃には細菌はいないと思われていました。
そこに、オーストラリアの学者が「ピロリ菌が胃潰瘍や胃炎の原因になっているのではないか?」という仮説を立ててその研究でピロリ菌を発見しました。
という背景があります。
その後ノーベル賞を受賞した人は、ロビン・ウォーレン(病理学者)とバリー・マーシャル(微生物学者)です。
ピロリ菌が感染している胃には、急性や慢性の炎症(つまり胃炎)によってさまざまな障害が起きてきます。
その原因は,ピロリ菌が作る傷害物質と、ピロリ菌に反応して胃を守る粘膜の機能や血液の流れが低下することが原因で、胃潰瘍になりやすくなると考えられています。
その理由を述べると。
アメリカでの研究によりピロリ菌に感染している人は,十二指腸潰瘍や胃潰瘍に3〜4倍なりやすいことが報告されたからです。
この報告から、ピロリ菌に感染した胃潰瘍患者さんのピロリ菌を除菌できれば,潰瘍がほとんど再発しなくなるということも分かりました。
つまり、ピロリ菌を除菌してしまえば胃の健康状態が保たれ、バランスが良くなるということですね。
慢性的な胃の健康低下が無くなるということです。
しかし,除菌しないで放置したままにしておくと約半数の方はいくら治療しても1年以内に胃潰瘍が再発することがわかっています。
つぎに、潰瘍を起こす原因となるNSAIDsの内服薬についてです。
NSAIDsとは、痛み止めや解熱薬として使われているアスピリンなどの非ステロイド消炎鎮痛薬のことになります。
分かりにくいという方にはドラックストアーなどで市販されている薬の中にもNSAIDsが含まれる下記の商品などがあります。
参考までに挙げると
アスピリン(バファリンA®など)
イブプロフェン(イブ®など)、
エテンザミド(ノーシン®,新セデス®など)
イソプロピルアンチピリン(セデス・ハイ®など)
アセトアミノフェン(タイレノール®、小児用バファリン®など多くの市販薬)
NSAIDs(解熱鎮痛薬)不耐症・過敏症
独立行政法人国立病院機構相模原病院 臨床研究センターより:引用抜粋
※市販薬を購入する際は、ご確認のうえ使用するようにお願いします。
では、どうしてNSAIDsが胃潰瘍を引き起こす原因になるかというと。
NSAIDsの解熱・鎮痛のしくみによるんですね。
なるべく分かり易く解説しますと
まず、痛みを感じる物質が分泌されると人は痛みを自覚します。
その物質がプロスタグランジンPGという物質です。
プロスタグランジンは痛みの原因物質ですので、炎症を引き起こします。
プロスタグランジンが、どうやって生成されるかを理解する必要があります。
たとえば、ケガをしたときに組織が痛むとそこからアラキドン酸が生まれます。
そのアラキドン酸からプロスタグランジンは生成されるのです。
その生成される過程で、シクロオキシゲナーゼという酵素が必要になるんですね。
難しいと思いますがもうちょっとお付き合いください。
シクロオキシゲナーゼは(COXコックスと呼ばれています)COX-1とCOX-2を仲介するんです。
橋渡しの意味ですね。
何を橋渡しするかというと
COX-1は、胃を保護する働きがあります。
COX-2は、痛みを生み出す働きがあります。
それぞれ違った作用を橋渡ししていくことになりますね。
つまり、COXを阻害することによって痛みを取る効果を発揮する。
それがNSAIDsの働きです。
NSAIDsのはとてもよく薬な反面、胃の保護作用もなくしてしまうというデメリットがあります。
そのため、胃潰瘍になる原因になるわけです。
なので、NSAIDsを処方されるときはたいてい胃薬も一緒に処方されますよね。
その理由は、胃の保護作用がなくなるからです。
そのあとの経過としては、胃粘膜の血流が減少すれば胃の修復機能も低下して胃潰瘍を形成しやすくなるということです。
NSAIDsは飲むのを中止すれば、胃潰瘍は予防できます。
しかし、胃潰瘍をおこしたことがある患者さんが,どうしても低用量アスピリンを飲まなければならない場合があります。
たとえば
・「心疾患のリスクがある方」
・「脳梗塞のリスクがある方」 |
など血液をサラサラにする必要がある方ですね。
その時は、PG製剤やPPI阻害薬を服用することが勧められています。
でも胃潰瘍を完全に防ぐことは難しい場合もあります。
日本で使用されている主なNSAIDsはこちら
一般名: 主な商品名 |
アスピリン :アスピリン,バファリン(アスピリン配合剤)
インドメサシン :インダシン,インテバン,イドメシン インドメタシンファルネシル: インフリー ジクロフェナク :ボルタレン,ボルタレンSR(徐放剤),ナポールSR(徐放剤) ナブメトン :レリフェン エトドラク :ハイペン,オステラック イブプロフェン: ブルフェン ロキソプロフェン :ロキソニン プラノプロフェン: ニフラン ナプロキセン :ナイキサン メフェナム酸 :ポンタール ピロキシカム :フェルデン,バキソ メロキシカム: モービック ロルノキシカム: ロルカム セレコキシブ :セレコックス |
タバコですね。
タバコは胃潰瘍になるリスクが約2倍に高まることがわかっています。
理由はなんとなくわかると思いますが、タバコを吸うと胃粘膜の血流が減少します。
それと胃酸の分泌も亢進するからだと考えられています。
タバコはリラックス効果が得られやすい(その時だけ)ので、そのため副交感神経が有意に働くことによって消化酵素の胃酸の分泌が促されることによりますね。
でもこれだけでは胃潰瘍の原因にはならないです。
よくタバコやストレスが胃潰瘍の原因として取り上げられます。
しかし、タバコやストレスそのものだけでは胃潰瘍にはならないことも分かっています。
これも断言できます。
ストレスが加わると,自律神経系を介して胃粘膜の血流が低下したり,胃酸分泌が亢進したりしますが、それだけで胃のバランスは崩れません。
ストレスは一時的に胃の環境を乱すことはあっても、それはあくまで一時的なものだからですね。
タバコも一緒だと思います。(でもタバコはやめた方がいいです。)
問題は、ピロリ菌やNSAIDsによる長期的な胃環境の低下が問題です。
ピロリ菌に感染している人は、もともと胃を守るはたらきが低下しています。
NSAIDsもさっき書いた通りです。
ピロリ菌やNSAIDsによる胃の抵抗力の低下ストレスやタバコによる誘因が絡んで長期的に胃潰瘍になってしまうんだと思います。
たとえば良い例として、阪神淡路大震災の時に,ストレスによる潰瘍出血が多かったことがありました。
その理由は、ピロリ菌に感染している人だったことが報告されています。
ここからは、胃潰瘍になってしまった時にどんな感じで治療が進んでいくのかについて書いていきます。
胃潰瘍になってしまった原因が少しでも理解出来たら、再発しないように考えますよね。
また、早く治るようにするには漠然と成り行きに任せるのもいいですけど、自分の病気について認識することで安心しますよね。
完治に向けて大事なことだと思います。
出血性の胃潰瘍はそのまま放置すると貧血になりますし、下手するとショックとなる可能性があります。
現在では内視鏡的止血治療および薬により,ほとんどが治療できるようになっています。
(1)ショックの治療
失血によって心臓への血液還流量が減少し,血圧の低下が生じます。
これを補うために頻脈(脈拍数が多くなります)となり、末梢血管が収縮するため血流が悪くなります。
ショックでは点滴による補液を開始します。
原則としてショックに対する処置を先におこなってから内視鏡検査や治療を行います。
(2)内視鏡治療
内視鏡で止血をしていきます。
色んな方法がありまして、以下に示しておきます。
最後に書いたクリップ法は再出血の予防効果の面で他の方法よりも優れる傾向にあると言われています。
ぼくの病棟でも、止まりにくい止血処置に使うのはクリップ方が多いですね。
止血後の経過観察は、おもに腹部症状(腹痛とかお腹の張など)と下血がないかをみていきます。
・内服薬PPI
胃酸の分泌抑制薬であるPPIの出現により,今日ではそれらが胃潰瘍治療の中心となっていますね。
胃潰瘍の治療に用いられる薬は
とに分けて考えます。
胃潰瘍の初期治療ではPPIもしくはH2RAなどの胃酸の分泌抑制薬が主体です。
・ピロリ菌の除菌薬
ピロリ菌に感染していたら除菌しないと再発します。
除菌しないと胃潰瘍の治療にはなりません。
ピロリ菌除菌薬の副作用として下痢、軟便、味覚異常、口内炎などの頻度が高いです。
・維持療法
胃潰瘍は極めて再発しやすく、治療を終了すると高頻度に再発していました。
ピロリ菌を除菌したうえでの再発率は数パーセントの結果が出ていますので、維持療法は医師の指示に任せるべきです。
胃炎症状が持続するなら、維持療法としてではなく、機能性ディスペプシア(FD)として別の対処をするべきと考えます。
今までの解説からも分かるように胃潰瘍は完治する病気です。
まずは2大原因であるピロリ菌の感染とNSAIDsの内服薬がないかみます。
ピロリ菌の除菌やNSAIDsの薬を止めます。
出血しないかをみながら、胃潰瘍の薬を飲んで治療します。
自己判断でやめることなく8週間、飲み切れば自然と完治します。
治療が終わっても医師の指示により、維持療法を続ければ再発の確率は非常に低いです。
胃潰瘍の原因から解説していきました。
胃潰瘍は完治する病気なので、しっかり治療して原因を治療すれば治ります。
また、ストレスや生活環境だけでは原因とはならないので安心してください。
ただし、胃潰瘍を引き起こす誘因にはなるので、原因がないかを一度は確認しとくと良いかもしれませんね。
最後まで読んで頂きましてありがとうございました。