吐血をした患者さんに遭遇したことはありますか?
吐血にもいろいろあって、吐血の色とか量で緊急度が変わってきます。
僕が経験した吐血は、黒色でした。
緊急性が高いのは鮮血色で真っ赤な血の色の吐血の時です。
真っ赤な鮮血の場合(緊急性が高い!)
黒い色(コーヒー残渣様)の場合
以上からも黒い色だったからそこまで緊急性はないですね。
でもこれが意外とそうでもなくて、緊急性があるとかないとかいう前に慣れない急なことが起こったときは何が起きても慌てますよねって話です。
で、救急外来とかを経験してれば別ですけど、吐血したときの対応なんて動けないし知らない人は多いはず。
吐血って如何に突発的で、その状況に遭遇した時に慌てない看護師はいない。
それは吐血に限ったことではないかなと、
次、いつかわからない吐血時のために振り返って学習して、冷静な判断と看護の仕事ができる様に努めていくしかないのかな。
同じような緊急時を一度経験しておけば、記憶が新しければ新しいほど再遭遇したときの対応はスムーズに閃いて動けるのだろうけど、そんな都合のいいケースはまれです。
普段から滅多にないことだからですね。
目次
カンタンに時系列に吐血した患者さんの状況とか、対応したことと知識を補足して書いていきますね。
その日僕は、夜勤でした。
黒い吐血をしたのは夜勤明けの朝食前の8時前
先ほども書きましたが、基本的に黒い吐血は緊急性はないことがほとんどで、吐血が黒くなる原因は2つあります。
一つは、血液が酸素に触れることによって起こる酸化ヘモグロビンによる黒色化(ヘモグロビンに含まれる鉄に酸素が触れると酸化する) もう一つは、胃内に出血した血液が胃酸に触れると、塩酸ヘマチン化による黒色化です。(血液が胃酸に触れて時間が経つと黒く変化するんですね) |
深夜にその患者さんは熱発していました。
詳細を説明していきますね。
深夜0:30
患者さんの心電図モニターが異常にノイズが混入していて、HRが120になっててアラームは鳴っているし、波形も小刻みにカウントしてたので、様子を見に行った感じです。
通常、モニター管理しているとナースステーションで異常があったらアラームが鳴って教えてくれる。
ノイズはよく筋電図とか小刻みにけいれんしても波形として拾ってしまうんで、通常の波形がどんな波形かを確認しときつつ異常音に気づくようにアンテナを張っておく必要がある。 |
訪室すると患者さんはシバリングを起こしていて、悪寒を自覚してました。
意識は変わりなく、呼びかけにちゃんと答えてくれて「寒いです!」という返答です。
その時の体温は、37.4℃
僕は、これからどんどん熱は上がるだろうなと予測してとりあえず体を温めるために、電気毛布を準備して掛けました。
熱はセットポイントがあってある程度体温が上昇し切ってからじゃないとクーリングとかしても意味がない。
きちんと体を温めて生体反応が起こってからじゃないと免疫が機能してくれないからです。 細菌とか病原体は自分の体温の熱で殺菌したり、弱らせる働きがあるためですね。 |
下記の図は熱型の波形です。参考にしてみてください。
今回の発熱でいうと、高熱が1℃以上の変動があった感じですね。
約1時間半後ぐらいに、様子を見にいくとまだシバリングは続いていて、でも体熱感は熱かったのでもうそろそろピークかと思い体温を再検しました。
熱は39,9℃
結構な高熱ですね。
でもシバリングは弱くなってるけど持続しているし、
と思い
呼吸が荒いので測定
30回/分
血圧は?
90/50mmHg台
酸素は測らず
意識は高熱のせいかボーッとしているけど合視・追視はある。
返答も乏しいけどできる。
身体的所見は?
腹部ぼうまんはなさそうだし、オムツ内に自尿も出ている。
腹痛も訴えはないし、圧痛もない。
脈は速くて120台
僕のその時のアセスメントは血圧が低めの傾向で脈が多すぎる。おまけに高熱なので何かしらの感染症からの敗血症の可能性になりそうな印象を持ちました。
敗血症の評価基準
このクイックSOFAスコアだと、血圧はSが90台と、呼吸が頻呼吸の30回/分で意識レベルはちょっとボーッとしているけど低下はない印象。
つまり、これだけで2点以上なので、敗血症の疑いがありますね。
なので、速やかに当直医に報告して指示をもらいました。
ここでちょっと患者さんについての情報をカンタンに提示しておきますね。
80才台 男性
ADLはほぼ寝たきりだけど、最近車椅子で食堂に誘導して自力で食事摂取してた。
排泄はオムツ
清潔は介助浴
既往歴は、イレウス・アルコール依存症の肝機能障害・慢性硬膜下血腫・慢性胃炎があります。
入院して一時は意識も低下傾向で亡くなる可能性があったけど、なんとか持ち堪えて徐々に回復してきている感じでした。
さて、医師からの指示は以下の通り
血液培養の取り方について解説記事あります。興味のある人はご参照してね⏬ インフルエンザ検査キッド関する記事はこちら⏬ |
深夜帯で何か患者さんのトラブルがあると、マンパワーが足りない状況での看護なのでめちゃくそ時間を取られます。
でもそうは言ってられないので、指示通りこなしていって気付いたら深夜4時前
体温再検は38.9℃
特に状態変化はない様子。
シバリングも消失してて、電気毛布もオフしました。
記録にも書いたしやることはやったので、そのまま朝まで経過観察して日勤帯にバトンタッチしようと考えていました。
何回も言ってますが、すみません吐血したのは朝8時前
実際には、吐血していた後に気づいたのがその時だったので、時間がいつかははっきり特定できていない
ただ、朝のインフルエンザ検査で7時30に鼻腔から検体を採取しに行った時は吐血していなかったのを考えると、その後に吐血したんじゃないかと思います。
多分、鼻腔に綿棒を突っ込んだことが誘引となって、我慢しきれず吐いたんじゃないかな。
早朝も体温は38℃台で経過してたから無理して食堂には誘導せず、ベッドサイドで提供することにしたけど食べれないだろうなという感じだったので、とりあえず食事の準備するために訪室したら吐血してる!
って気づいた。
患者さんも口元を布団で隠してて、一瞬わからなかったけど布団の一部が血を拭き取った様に汚れていて
「ん?」なんで汚れてるんだ?って思って、口元も汚いなと思って(顔を掻きむしったのか?)それをティッシュで拭き取ろうとした時に、首筋から肩の衣服まで黒くなんか付着してるじゃないか!
最初、出血してると思いました。
首か頭からね
それにはクーリングしてて、氷枕の口栓をクリップしてる金具が当たって切れてしまったのかと思ったから。
でも色が黒いのですぐに吐いたんだと気付きました。
そこから一瞬でパニックになりましたね。
緊急時にすることについて解説した関連記事はこちらです⏬ |
でも慌てずにやるべきこととして声かけしたら意外と返答してくれたので「意識は大丈夫かもしれない」と感じました。
そのまま患者さんは「大丈夫です。ちょっと吐いちゃった」っていってくれたから
とりあえず緊急じゃないことには気づいて、夜勤パートナーに報告して一緒に対応してもらいました。
吐血は黒いし、匂いも鉄臭くて血の匂いがします。
コーヒー残渣様ですね。
コーヒーを入れたことがある人はわかると思いますけど、淹れたあとに残ったコーヒ粉の残りカスを流しにぶちまけると同じ様になることから付いた
画像引用元:https://blog.goo.ne.jp/naturalsouji/e/0217645d2c61fc1b71142e2c9c7cccab
で、患者さんの状態はというと
という様な感じですね。
とりあえず、衣服が黒い吐血に汚染しているので着替えを行いました。
夜勤パートナーと「これ、吐血だよねっ」て会話をしながら「やばいよね」みたいなことを話し、イレウスか消化管内の出血を起こしているんじゃないかなんていいながら着替えさせました。
着替えた後、いったん師長も来ていたので報告しました。
報告して戻ってきた時には再吐血してましたね。
吸引して窒息しない様に鼻からと口からと吸引しました。
そしたら引ける引ける、黒い嘔吐物
それでも患者さんはゴボゴボ言ってて、どんどん吐く状態ですね。
量はどれくらいでしょうかね。
吸引びんを後で確認したら、300mlぐらいは引けたんじゃないでしょうかね。
胃液を吐きまくって気をつけたいのは、代謝性アシドーシスとアルカローシスですかね。
意識があってよかったのと、窒息しなくてよかったです。
下手したら気管に入って窒息しかねない状態ですよね。
その時にSPO2を測定したら、流石に低くて66%でしたね。
酸素を3Lカニューラで開始して、同時に吸引して対応しました。
そうこうしている内に師長が医師と連絡を取ってくれてて、サンプチューブを持ってきてくれてたんで医師から指示をもらってました。
サンプチューブとは、胃管カテーテルのことですね。
参考画像引用元:https://www.muranaka.co.jp/online/products/detail.php?product_id=326
すぐにサンプチューブを鼻から挿入して、再吐血しない様にして胃内にも排液がたまらない様にしました。
ちなみに、サンプチューブは挿入したら惻菅は排液が出ないようにま結びで閉塞します。
チューブの遠位先端は排液バックをつなげて排液量が確認できるようにします。
最終的に、SPO2はその時点で70%台後半までしか上がらず、サンプチューブを自抜する予感はあったけど本人に「抜かないでよー!」「抜いたらダメですよー!」って伝えて本人もよく頷いていたんで、大丈夫かなと
SPO2の基準値
病棟で理解しつつ活用するのにちょうどいいのがありましたので、参考にしてみてください。
今、だいたい酸素飽和度ってざっくりしてて、病棟に入院している患者さんとかは一般病棟ならほとんどが高齢者なので、基礎疾患とかざらに持ってる人がほとんどの中で、SPO2も99〜95%取れてればOKだったけど
なかにはCOPD傾向の人とかもいるんで一概に95%以上って言えなくなって来てる印象ですね。
なので、肌感覚としては本人の呼吸状態とか観察して、チアノーゼとか冷感のあるなしとかを加味しながら例えば、92%前後であったとしてもヨシとしていることがありますね。
慢性的に低めの人もいるのは確かで、そのことで特別問題にすることはあまりない感じですね。
よっぽど普段と値が低ければアセスメントするし、酸素噛ませようかなっ、報告しなきゃなって考えるけど結構、勘が頼りになるところではありますね。
話がずれましたね、すみません。
で、その後は日勤者スタッフに交代しました。
後日、血培も細菌は特定なしということで、CRPは2桁に上昇してましたね。
感染症があったんだろうということで抗生剤が奏功して発熱も徐々に下がっていきました。
あと、吐血の原因については胃カメラは下ないので潰瘍があるかはわからないけど、1ヶ月前に検査はしていたのでそこで慢性胃炎の診断は出てます。
慢性胃炎からほんの少し潰瘍に移行した?わかりませんけどじわじわと出血して来たのが溜まって発熱をきっかけに吐血したのかな?
最後に吐血の原因疾患別の統計があるので参考までにご参照してみてください
【上部消化管出血(517例)の原因疾患】
第1位・・・・胃潰瘍(32.4%)
第2位・・・・十二指腸潰瘍(11.5%)
第3位・・・・食道静脈瘤(9.1%)
第4位・・・・逆流性食道炎(5.1%)
第5位・・・・胃がん(3.1%)
その他・・・急性胃粘膜病変(2.2%)、マロリーワイズ症候群(2.6%)、吻合部潰瘍(1.0%)
(参照元:長谷川ら/日本腹部救急学会雑誌26(4):491~496,2006)
今回の黒い吐血をした時の対応を実際してきたことを通して書いていきました。
抑えておきたい吐血のポイントをまとめると以下の通りです。
最後まで読んでもらいありがとうございました!