更新日:2020-02-26
せん妄について大切な考え方は、せん妄予防をいかに看護の中で行っていくかに尽きると思います。
せん妄の症状が出てしまってからだと、対応はいっそう難しくなります。
何が難しいかというと
「患者さんの協力が得られなくなる」です。
最終的に強引に介入せざる得ない状況になるし、このパターン多いです。
なので、エビデンスをもとにしたせん妄の予防について看護の考え方を解説していきます。
よかったら参考にしてもらえるとうれしいです。ではさっそく行ってみましょう。
この記事を読んで分かる内容
- せん妄が起きやすい因子が分かる
- HELPというせん妄予防プログラムがあることがわかる
- せん妄予防の看護のポイントがわかる
目次
せん妄を予防するには危険因子を知っておきましょう【看護で役立つ】
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せん妄の本質的な考えがわかりますよ。
では、術後せん妄って何で起こるのかよく分かっていないんですね。
いきなり無責任に聞こえますが、個人差が激しいので線引きは難しいということですね。
ですが術後せん妄を起こしやすい人はある程度傾向が分かっていますので、この危険因子に1つでも当てはまる場合は予防対策をした方がいいですよ!ってことになります。
せん妄の危険因子5選
- 70歳以上
- 認知症か
- せん妄の既往歴の有無
- アルコール多飲
- オピオイド、ベンゾジアゼピン系の薬剤の術前使用がないか
上記が、せん妄を起こしやすい傾向の危険因子です。
なんとなくの印象ですけど、脳に関わりそうな因子ですよね。
そのくらいの把握というか認識でいいと思います。
で、この危険因子から予防になる看護をしていくには?
どうすればいいかについてです。
結論は、何をどのように予防するかは短期的に難しいし、はっきりとしたエビデンスが出てるわけでもないんですね。
ですので、数少ないエビデンスを基にした対策「HELP」っていう、高齢者を対象にしたせん妄予防プログラムがあるんでそれをご紹介します。
このプログラムの強みは、エビデンスべーすであるということですね。
ただ単に個人的に薦めたいとかではなく、医学的根拠があるってところがキモになります。
ザックリ言うと
危険因子を6つに分けて看護するせん妄予防プログラム
- 認知障害
- 睡眠不足
- ベッドから動かない
- 視覚障害
- 聴力障害
- 脱水
上記6つですね。
HELPプログラムの内容
1.認知障害 | 積極的で意識的なコミュニケーションを図る、ゲームなどを取り入れる。 |
2.睡眠不足 | 温かい飲み物を飲む、リラクセーションやマッサージなど、非薬物的な睡眠介入や環境調整を行う。 |
3.ベッドから動かない | 定期的な歩行や可動域訓練、尿道カテーテルの使用は最小限にする。 |
4.視覚障害 | 眼鏡の使用や大きな文字で書いてあるものを使う。 |
5.聴力障害 | 補聴器の使用や耳掃除をする。 |
6.脱水 | 脱水にならないように積極的に飲水を促す。 |
その他のせん妄予防対策として薬剤による試みも行われていますが、明らかには効果は見られていないんです。
とはいえ、ハロペリドール(セレネース)を術前から術後3日目まで毎晩少量投与(1.5㎎)させたら、せん妄の発症率や重症度が低下し、せん妄期間が短縮したとの報告はあります。
内服薬では、オランザピン(ジプレキサ)とリスペリドン(リスパダール)に予防投与によるせん妄発症率が低下したとの報告があります。
また、最近ではラメルテオン(ロゼレム)やスボレキサント(ベルソムラ)にも、せん妄予防の効果が期待できるとの報告があります。
まあ、ここら辺はドクターの判断によりますので参考までに
これら危険因子の特徴をまとめると「ちょっと入院歴が長くなりそうな高齢患者はみんなリスクがある」
ってことが言えますよね。
せん妄予防に関する3つのアプローチ
さて、ここからはせん妄を予防するための看護アプローチを書いていきます。
これまでのことから、せん妄予防には環境整備と疼痛管理と薬物治療の3つが看護師が介入できることになります。
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薬物治療は限られてくるんで優先度は最後になります。
- 環境整備
環境整備は毎日のことではありますが、単に整理整頓しましょう。っということではなく、不要な安静は避けて、出来るだけ早期離床を促し、酸素や心電図モニター、SPO₂、尿道カテーテル、輸液などの点滴など外せるものは外すってことです。
患者さんにとってそれらがストレスとなってせん妄の要因になりかねないですし、煩わしくて「どうにかしてっ!」って言ってくることからせん妄が始まっちゃいます。
また、身体抑制も出来るだけ避けて、日中は明るくしてテレビやラジオ、音楽などで刺激を与えて、逆に夜間は出来るだけ暗く静かな環境を整える。
つまりは生活のリズムを整えるにはどんな看護をしていけばいいかな?
って考えをベースに介入するってことですかね。
- 疼痛管理
せん妄予防には疼痛管理が効果的と考えられていますから、積極的に鎮痛剤を投与します。
根拠は、聴力障害の患者さんでは疼痛管理が不十分であった場合、せん妄を引き起こす可能性を指摘した論文があったり、疼痛管理に有用なPCA(patient controlled analgesia:自己調整鎮痛法)を使うことで、せん妄を抑制できたという報告があるんですね。
ですが、オピオイドや麻薬拮抗性鎮痛薬(ペンタゾシンやブプレノルフィン)はせん妄を引き起こす可能性があり、使う薬剤にも注意は必要です。
鎮痛薬に関連する疼痛コントロールについての記事はコチラ⬇️
最後は薬に関することです。
一応参考までにお伝えしておきますね。
ハロペリドール(セレネース)は注射薬でしかないので、術後絶食をしなければいけないケースはセレネースを使います。
飲み薬のクエチアピン(セロクエル)はせん妄予発症時の早期改善に有効との報告があります。
あと、ジプレキサ、リスパダール(リスペリドン)なども使われます。
ただし、ジプレキサとセロクエルは糖尿病患者には禁忌です。(急激な高血糖を起こすリスクがある)
セレネースを使うときのポイント
セレネースは静注・筋注ができますが、ルートがある場合は静注でした方が副作用のリスクが低いことが分かっています。
方法としては、セレネース1Aを生食20mlで溶かしてワンショット。
今まさに不穏が強い患者さんの時なんかは効果的です。
あとは、セレネースは呼吸抑制を起こすことがないので注射速度は気にしなくていいです。
ゆっくり効果を出したければ生食100mlに混注して点滴で落とすやり方もあります。
ただし、効果が弱かったり効かなかったりするのでその場合は、フルニトラゼパム(ロヒプノール、サイレース)やミダゾラム(ドルミカム)を併用します。
どちらも数秒から数分で効果が出ますか呼吸抑制の副作用には注意して必ずモニタリングします。
まとめ
まとめますね
- せん妄の危険因子を理解する。(ちょっと入院歴が長くなりそうな高齢患者はみんなリスクがある)
- せん妄予防プログラムっていうのがあるよHELP
- せん妄予防には環境整備と疼痛管理と薬物治療の3つが看護師が介入できることです
術後せん妄も原因はよく分かっていないながらも、エビデンス的にはHELPを知って看護をしていくと色んな事が気付けるかもしれないですね。
せん妄になると患者さんにとって不利益なことが沢山起こり得ます。
ドレーンの自己抜去・点滴の自抜・ベッドからの転落転倒とか想定外のことも起こりうるんで術後せん妄は常に念頭に置いておきたいです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
コメント
[…] でも書きましたけど、不要な物や不快なものは撤去するか目の見えにくいように工夫する。術後せん妄に関する記事はこちら→せん妄予防のHELPは少ないけどエビデンスがベースだよ […]