今回は、術後の発熱ってどのタイミングで起こすとヤバいのか?
について、答えていきます。
結論は術後3日目の発熱が危険です。
また、どのタイミングなら発熱してても経過観察でいいのか?
なんかも書いていきますのでよかったら参考にしてみて下さい。
この記事を読んで分かること
- 術後3日目の発熱がヤバイってことの理由
- 術後発熱時の症状と対応が分かる
- 術後発熱は下げるべきかの結論
また、おすすめ書籍も紹介してますので、よかったらみてみて下さい。
では、さっそくみてみましょう。
目次
術後3日目以降に発症する発熱は感染している可能性があります。
術後の発熱は3日目までがタイムリミットです。
術後の発熱には、発熱するタイミングによってある程度生理的に発熱しているのか?
そうでないのか?
危険な発熱なのかが判断できるタイムリミットは3日目までです。
3日目以降に起こった発熱は創部からの感染の可能性がグッと上がってきます。
術後3日目までであれば、手術侵襲の影響が考えられるんで、術後経過に問題が無くても発熱するのは普通です。
合わせて読んで欲しいオススメ術後管理に関する記事はコチラ⬇️
メカニズムは手術による炎症性サイトカインの産生とか分泌であると、考えられているんですね。
サイトカインっていうのは、情報を伝達する物質で全身に侵襲の発生を伝えて、適切な生体反応を起こさせる役割があります。
生体反応は視床下部の体温調整中枢に作用することで発熱が起こります。
手術による発熱の場合は、術後2~3日で解熱することが多いのでそこまで心配はしなくてもいいのかなと思います。
発熱の程度や持続時間は術式によって変わってくるので、長時間の手術や広範囲の手術後では発熱が起こるのが普通なんです。
術後3日目までの発熱はほとんど心配いりませんが、合併症に伴う発熱の可能性もあるので、他の異常所見がないかの確認は観察する必要があります。
感染兆候の観察項目
ドレーン排液の性状 腹部膨満感 腹部や創部の所見 腹膜炎の所見 |
術後3日目以降の発熱の特徴的な症状は重症化に注意する
先ほども言いましたが、術後3日目以降の発熱は注意が必要です。
特に悪寒戦慄を伴う場合は重症化する可能性があります。
3日目以降の場合縫合不全が最も注意が必要で、ドレーンの排液の性状や腹痛、腹部膨満感の有無、腹膜炎の所見(筋性防御や反跳痛)の有無は必ず観察します。
ドレーンから腸液のような排液や腹膜炎の所見があれば縫合不全の可能性が高いため、早急に医師に報告する必要がありますね。
起こりやすい術後合併症
- 肺炎
肺炎は術後早期に発症することが多くSPO₂の低下や痰の増加があれば、肺炎の可能性があります。
- 手術部位感染(SSI)
手術部感染は創部の発赤・腫脹・熱感・排膿・腸炎は頻回な下痢などがある場合に、その可能性を考えます。
- 尿路感染
尿路感染は直腸がん術後の排尿障害の患者や、長期の尿道カテーテル症例で特に発症しやすいです。
- カテーテル関連血流感染症(CRBSI)
カテーテル関連血流感染症は、発熱や悪寒戦慄以外の症状がほとんどなく、中心静脈カテーテル(まれに末梢静脈カテーテルでも)挿入中で、他に発熱の原因が考えられない時に疑います。
術後感染症が疑われたら何をするのか?
まずは敗血症じゃないのかを確認するためにバイタルサインを測定します。
qSOFAスコア
「意識の変容」 「収縮期血圧100mmHg以下」 「呼吸数22回/分以上」 |
のうち2項目満たせば敗血症が疑われますからね。
qスコアについて書かれた記事がちょっとだけありますので参考までに⬇️
ってことで、早急に医師に報告する必要があります。
バイタルサインが安定していても、急な発熱は抗菌薬投与など治療のマネジメントの変更の可能性が高く、医師への報告が必要です。
つまり、抗生剤の投与をしているのに発熱が落ち着かなければ、薬が効いていない。
原因菌に効いてないので、治療を変更する必要があると言うことですね。
感染症が疑われた場合、「とりあえず血培(血液培養検査)」という指示が出ることが多いです。
血液培養について書いたオススメ記事はこちら⬇️
というのも、血培は感染症診断で最も重要な検査だからですね。
血培が陽性であれば、体のどこかに菌がいることになるんで菌が特定できれば抗菌薬の選択が絞れるからですね。
また、何らかの症状がありそうの部位の感染が疑われる場合は、その部位の分泌物の培養もとります。
(肺炎なら痰、尿路なら尿、創部からなら浸出液、腸炎なら便)。
これらも、原因菌の特定と抗菌薬の感受性を調べることが目的です。
術後の発熱は下げるべきか否か問題
38℃以上の発熱を見ると反射的に解熱剤を投与する人がいますし、実際僕も投与したくなりますよ。
ですがあまり望ましいことではないようです。
発熱のリスクとしては「呼吸不全や心筋虚血、中枢神経障害が悪化し死亡リスクが増大する」とされています。では発熱が本当に予後に影響するのでしょうか?
この疑問について実験検討が行われました。
ICU患者700人を対象とした、解熱薬使用群と未使用群を比較したRCTがありますが、死亡率やICU滞在期間に差はありませんでした。
また、ICU患者1425人を対象とした研究では解熱薬の投与が死亡率悪化の独立因子でした。 |
発熱は免疫系を活発にした結果であり、無理に解熱させることで免疫系を抑制したと結論付けています。
そのために、死亡率が悪化したと考えられています。
この報告からどこまで信憑性が担保できるかは分かりませんが、僕個人的には患者さんがキツそうなら飲んでもらって楽にしてあげたいと言う気持ちになりますけどね。
まとめ
一般病棟ではこれらの研究を鵜呑みにしてはいけませんが、少なくとも38℃以上でルーチンの解熱薬投与はちょっと考える必要はあるかもですね。
でも実際は主治医の好みとか病棟の方向性などが影響しておりますが・・・
改めてまとめです。
- 術後3日目以降の発熱は感染の可能性が高い
- 術後早期の発熱自体は生理的である
- 重症化しないように観察する(qスコア)
- 発熱時の解熱はリスクをいったん考えて患者さんに合わせて投与する
少しでも参考にしてもらえるとうれしいです
最後まで読んでいただきありがとうございます。
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